スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

タウを標的とした Rember 


TauRx Therapeutics前頭側頭型認知症 (FTD) を対象としたLMTX®のフェーズ3を開始するというアナウンスがありました。

 ⇒ Phase 3 Clinical Trial Begins in Early Form of Dementia

以下、要約です。

軽度から中等度アルツハイマー病患者を対象とした有望な研究結果を受け、研究中の薬剤の治験が開始される。

TauRx Therapeutics は本日、ピック病として知られる前頭側頭型認知症の一形態の第3相国際共同治験開始を発表した。

この発表は、9月5-7日にイギリスのマンチェスターで開催された、第8回国際前頭側頭型認知症会議の直後に行われた。
会議では、アルツハイマー病と類似しているがどちらかといえば異なる脳領域に損傷を与え、早ければ40歳で影響が現れる点が異なるこの認知症の、新たな治療法の必要性が強調された。

この研究では、行動異型前頭側頭型或いはbvFTDとして知られ、早い時期からの人格変化と感情の喪失を引き起こすタイプのFTDに焦点を当てている。
この疾患の患者の大部分は、脳内にタウ蛋白の異常な集積が起こる特有の病理を有する。

この治験薬 LMTX® は、神経細胞廃棄物との結合によって、正常な形態のタウ蛋白質が脳内で自己凝集し始めるプロセスを標的とする。
一度このプロセスが始まると、この凝集は正常なタウ蛋白を消費し、毒性の凝集に変えてしまうことで無制限に自身を増殖させる。
自身が最初に形成された神経細胞を破壊した後で、この凝集は隣接する健康な神経細胞に感染し始め、徐々に拡散し、そして脳全体の破壊を加速する。
LMTX® はこの凝集過程を直ちに止め、捕えられたタウ蛋白を、神経細胞が容易に除去出来る形態で開放する。

一連の試験的な実例で、 LMTX® はこの疾患の進行を停止させることが分かった。
LMTX® はTDP-43 蛋白の凝集に対し同じように作動することも分かった。
タウやTDP-43 の凝集はそれぞれ、この早期に発症する形態の認知症患者の約50%を占めている。

マンチェスターの国際前頭側頭型認知症会議で患者や介護者の前で話しながら、この研究の調査責任医師であるメイヨークリニックのブラッドリー・ボーヴ ( Bradley Boeve) 教授は次のように述べた:
「FTDの臨床試験開発に尽力している臨床医たちは、長年に渡りFTDスペクトラム障害の臨床試験で使用する評価基準を改良してきた。
そして、あからさまに有望な薬剤をずっと待ち続けて来た。
この薬剤の基本的な科学データは、特にタウオパチーに関しては、理にかなっているように思われ、調査責任医師や家族は非常に興奮している。」

二重盲検プラセボ対照で行われるフェーズ3試験は、TauRxが開発した第2世代タウ凝集阻害剤(TAI) LMTX®の安全性と有効性の評価を計画している。
この試験では、bvFTD患者を対象とし52週という時間枠で行われた大規模比較臨床試験からの、試験的な事例で最初に見られた結果を確認することを目的としている。
試験参加サイトは、カナダ、米国、英国、ドイツ、オランダ、オーストラリア、シンガポールに位置している。
この症状は比較的稀であるため、TauRx の LMTX® は2010年に希少疾病用医薬品 の指定を受けた。
この指定は、試験が成功した場合、マーケティングのための迅速な承認の根拠を与える。

「これは、本当に疾患の進行を止めるという目標を持ち、効果的な治療を見出すという我々の探求の重要な一歩だ。」
TauRx Therapeutics の設立者兼最高経営責任者(CEO)にして、アバディーン大学老年精神医学教授のクロード・ウイシク(Claude Wischik)は述べている。
「我々は30年以上の研究と、これも脳内の異常なタウ凝集と関連するアルツハイマー病の以前のフェーズ2臨床試験の有望な結果を足場にしている。」

TauRx は以前、イギリスとシンガポールで軽度から中等度アルツハイマー病患者321名を対象としたフェーズ2の臨床試験を行い、LMTX® の基礎となった第1世代のTAI (タウ凝集阻害剤) rember© をテストしている。
この研究では、アルツハイマー病は2年以上に渡り疾患進行率が90%減少した。
ウイシク( Wischik )教授のチームは24年近く、アルツハイマー病、FTDや他の神経変性疾患の進行におけるタウ蛋白のもつれの構造や役割を調べてきた。
彼らはアルツハイマー病におけるタウ蛋白病理の最初の発見者だった。

「FTDの治療法が臨床試験でテストされるというのは、非常にキサイティングなニュースだ。」
イギリスの前頭側頭型認知症サポートグループ(代表)のペネロペ·ロケス(Penelope Roques)は述べた。
現在のところ可能な治療法が存在しない状況で、これは勇気付けられる進展だ。」
このグループには、FTD患者から介護者、家族に至るまでおよそ1000名のメンバーがイギリス全土に渡って参加している。

もし成功すれば、この疾患の進行を止めることが出来る最初の試験薬となる。
アバディーン大学からスピンアウトし、シンガポールに本社を置くTauRx Therapeutics は、脳神経細胞内にに形成されるタウ蛋白質の異常な凝集を目標とした、全く新しいアプローチに基づく新たな治療法を開発した。
以来、TauRx チームは LMTX® がFTDにおけるTDP-43 や、パーキンソン病におけるシヌクレインを含む異常に凝集する蛋白質に対しても有益な効果を有することを発見して来た。
FTDでは、前頭葉と側頭葉が最初に影響を受け、行動や情動に影響を及ぼす。
疾患の進行に連れ脳の他の部分も影響を受け、最終的にはすっかり認知症になってしまう。



(※現時点では、自閉症スペクトラム障害とか双極性スペクトラム障害という言い方はあっても、FTDスペクトラム障害とか前頭側頭型認知症スペクトラム障害という用語は、検索する限りではまだ見当たりません。
 FTD spectrum disorder は3000件位ヒットします。)





TauRx Therapeutics は現在、FTDのフェーズ3を1件(募集開始前)、アルツハイマー病のフェーズ2を1件(募集開始前)、それぞれ予定しています。
FTDは開始が2012年9月で終了予定は2014年、アルツハイマー病は開始が2012年8月、終了予定が2013年2月です。

 ⇒ afety and Efficacy Study Evaluating TRx0237 in Subjects With Behavioral Variant Frontotemporal Dementia (bvFTD)
 ⇒ Safety Study of TRx0237 in Patients Already Taking Medications for Mild and Moderate Alzheimer's Disease

対象の薬剤は何れも TRx0237 で、これが記事中のLMTX® に該当するのではないかと思います。
記事中でアルツハイマー病のフェーズ2で好成績を挙げた、とあった rember© は使用せず、第2世代のLMTX® でアルツハイマー病にも対応すると思われます。


この rember© は2010年10月31日のNHKスペシャル「認知症を治せ!」で報道されたようです。

 





Wiki のRember を見ると、これはメチレンブルーだと記載されています。

毒性は、Safety Data Sheet を見ると、それほど高くはないようです。

 ⇒ Material Safety Data Sheet Methylene Blue

LD50は、マウス(経口):3500 mg/kg 、ラット(経口):1180 mg/kg です。
但し、ラット(経口)では生殖毒性があります。
TDLo = 2500 mg/kg (female 1-22 day(s) after conception) Fertility - postimplantation mortality (e.g. dead and/or resorbed implants per total number of implants).
神経毒性は不明、変異原性はマウスの腹水腫瘍 : 70 umol/L で、哺乳類はリンパ球 : 1830 nmol/L です。
以前はマラリアの治療薬として使用され、現在でもメトヘモグロビン血症の治療薬として使用されているので、あまり心配する必要はないかも知れません。

FDAの Drug Safety を見ると、モノアミンオキシダーゼを阻害するので、セロトニン作動薬を服用している患者は要注意とのことです。

 ⇒ FDA Drug Safety Communication: Serious CNS reactions possible when methylene blue is given to patients taking certain psychiatric medications


また、Wiki では、メチレン・ブルーと New methylene blue は別物で、こちらは毒性があると記載しています。
(データ・シート(Material Safety Data Sheet New Methylene Blue N MSDS)上はまだ評価無し)



フェーズ2の試験結果は公式には公表されていないようです。
国際アルツハイマー病会議(International Conference on Alzheimer's Disease : ICAD)での断片的な発表とプレス・リリースのみと思われます。

当時のニュース(Slowing disease’s mental ravages)では、高い効果を現したとしか報道していません。
けれども、国際アルツハイマー病会議参加者のコメントはかなり辛辣です。

The Tangled Neuron の Rember: "Breakthrough" Alzheimer's Drug? はタイトルに”?”が付いています。

一番詳しいと思われる Alzheimer Research Forum の Chicago: Out of the Blue—A Tau-based Treatment for AD? から、経過を書き出します。

フェーズ2試験は軽度から中等度アルツハイマー病患者321名を対象として、30 mg、 60 mg, 、 100 mg、プラシーボ(偽薬)のいずれかを1日3回投与した。
アルツハイマー病治療薬服用者は除外。
トライアルの主な目的は、プラシーボと比較したメチレンブルーの効果を、24週ADAS-Cog で評価すること。
評価は6週毎に行われた。

ウイシク( Wischik )は、24週目のコホート全体の成績を提示しなかった。
結果は軽度中等度層別(解析)として示された。
軽度アルツハイマー病に関しては、6ヶ月間で群間の優位差はなかった
中等度アルツハイマー病に関しては、大雑把にはプラシーボ群は5.5ポイントの低下投与群では1.5ポイントの低下と報告した。

副次的目的は50週と84週での評価、25週での脳画像、安全性と忍容性だった。
50週の時点では、ウイシク( Wischik )は軽度と中等度のデータを一緒にして提示した。
50週ではプラシーボは7ポイントの低下で、60 mg 投与群では1ポイントだった。
治療効果は約6ポイント
これは高用量での81%の低下率削減に相当する、とウイシク( Wischik )は述べた。
低用量では3.5ポイントの低下

84週(21ヶ月)では、30 mg 投与群のデータは示されなかった
しかし、60 mg 投与群は依然として安定しているように思われた
プラシーボ投与期間は50週までだったので、84週ではプラシーボ群のデータはなく、ヒストリカル・コントロール(歴史的対照)との仮定の比較だった。

画像マーカーは一見したところ、結果を支持しているようだった。
(但し、画像のプラシーボ群は投与群より2歳から5歳高齢だった)

この時点で、製薬会社のプレゼンテーションでスタンダードとなっている幾つかのデータを除外して話していることは注目すべきだ。
例えば、どれ位の人数がトライアルを完了したのか、トライアル中止(者)の原因など。
後で他の研究者達は、どのようにして包括解析が行われたのか、脱落者が最終データの効力にどの様に影響したのか、などを訝しんだ。

100 mg 用量は効果がなかった
ウイシク( Wischik )は試験薬とカプセル壁のゼラチンの相互作用が原因だとした。
そのせいで胃から腸への薬物吸収が遅れた、としている。
ところが、この100 mg 投与群をそのままの状態で解析するのではなく、治験責任医師たちは100 mg 投与群をプラシーボ群と一緒に合わせて30 mg 投与群や 60 mg 投与群と比較した
これは通常ではありえない
このことは、1日300 mg投与された場合の副作用がプラシーボ群の副作用としてカウントされ、比較して30 mg 投与群や 60 mg 投与群の副作用を軽く見せてしまう。

メチレンブルーの効果の面からも、高用量群をプラシーボと合算することは、高用量群の高い副作用はプラシーボ群のみの進行状況に影響を与え、治療効果を大きく見せる可能性がある。

また、この試験は84週の完全な二重盲検の筈だが、メチレンブルーは尿を染め、眼(白目の部分)を青くする。
どの様にして二重盲検を達成できたのだろうか

更に、1つの薬剤がαシヌクレインまでカバーすることに疑問を呈する研究者もいる。




この様に、発表はちょっと怪しい感じがします。
(但し、軽度アルツハイマー病患者で効果がなく、中等度で効果が出た、という点は、アルツハイマー病の進行に従い色々な症状が混在してくることを考えると、あり得るかも知れません)

プレス・リリースでは2009年にも rember でフェーズ3を開始するようなことが記載されていますけれども、未だ開始していません。
その代わり、次世代の LMTX® で再度フェーズ2を開始しようとしています。
穿った見方をすれば、時間稼ぎをして改良していたのかも知れません。

アリセプトを開発した杉本八郎 氏は現在ファルマエイト(Pharma8) で新たな創薬を目指しています。
そのひとつが、メチレンブルーを改良したPE859です。
 
 ⇒ アルツハイマー病 根本治療薬の開発をめざして

この資料の中に、

『PE859は脳内サルコシル不溶性タウ蛋白を 20 と 40 mg/kgで有意に低下させた。
メチレンブルー(MB)とクルクミン(Cur)は 40mg/kg で低下作用は認められなかった。』

という記載があります。

sg_01.jpg


だから、タウに対するメチレンブルーの効果は、そのままでは思ったような効果が出ない可能性があります。
だからこそLMTX® なのかも知れません。



それでも、アルツハイマー病薬に対する意識 の中で書いているように、アルツハイマー病とアミロイド-β、タウ、αシヌクレイン、TDP-43 は全く無関係というわけではないようです。

更には、Wiki のMethylene blue はタウばかりではなく、アミロイドβ低下作用やミトコンドリアに対する影響を挙げています。

 ⇒ Methylene blue reduces Aβ levels and rescues early cognitive deficit by increasing proteasome activity


仮にこのLMTX® が駄目でも、これからやっとタウを標的とした新薬が幾つか、治験を開始する時期に差し掛かって来ています。
全てのアルツハイマー病患者というわけには行かないかも知れないけれど、特定の症状に対しては有効な薬剤が開発される可能性が少しは見えて来たような気がします。












関連記事
スポンサーサイト

はじめまして

最新の論文を読んでこのように分かりやすく記事にされるのは、大変だろうなぁ、と創造しながら、いつも読ませていただいています。
難しくて、あまり理解できないときが多いのですが^^;

LMTXに関する記事、ありがとうございます。
ずっと待っていたので、やっとここまできたのか、という感じです。
ほかにも、タウをターゲットに治験が始まりそうな時期なのですね。
たのしみです。
[ 2012/09/13 13:05 ] [ 編集 ]

Re: はじめまして



コメント有難う御座います。

> 難しくて、あまり理解できないときが多いのですが^^;

元々、専門家が専門家に向けて書いたものが多いためだと思いますけれど、ひとつには私の直訳が適切ではないためもあるかも知れませんね。
もっと分かりやすい日本語にすればいいんですけれど、この分野が専門ではないので、どうしてもオリジナルのレポートを置き換える感じで書いてしまいます。
もう少し工夫して見ます。

それと、返信が遅れまして申し訳ありません。
(実はFC2にはあまりログインしていないので、中々気が付きません。
 記事を投稿している日でも。)

[ 2012/09/16 07:38 ] [ 編集 ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://dislocon.blog.fc2.com/tb.php/289-7e196d42


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。