FC2ブログ












パーキンソン病の遺伝子治療と胎児細胞移植最新情報

 

AlzForum に、「Parkinson's: Update on Gene Therapy, Fetal Cell Transplants」 という記事が掲載されていました。

 

胎児細胞移植は兎も角、遺伝子治療は現在アルツハイマー病でもフェーズ2試験が行われているので、この結果は気になりました。

 

 

 

 

"Give a man a fish and you feed him for a day. Teach a man to fish and you feed him for a lifetime."

魚を一匹与えれば、彼はその日の食事に困らない。魚の釣り方を教えれば、彼は一生食事に困らない。

 

ことによると、この諺はパーキンソン病(PD)のニューロンにも大筋で当てはまらないこともない。

錠剤はドーパミンの濃度を数時間補う。

もし脳を、自身で分泌するように誘導出来たらどうだろうか?

遺伝子治療や細胞治療は正にこれを狙っている。

 

フランスのクレテイユにあるアンリ·モンドール大学病院(Hôpitaux Universitaire Henri Mondor, Créteil, France)の Stéphane Palfi とイギリスの生物薬剤製造会社 Oxford BiomedicaKyriacos Mitrophanous の合同チームはこれを行うため、神経変性疾患の治療にレンチウィルスを使用した史上初めての人間の臨床試験において線条体細胞を得ようと試みた。

このフェーズ 1/2 非盲検臨床試験の結果が1月10日の Lancet誌 に登場した。

14名のボランティアが最大4年間の遺伝子治療に耐え、運動性にある程度の改善を示した。

 

一方、1月の JAMA Neurology 誌の論文では、およそ20年前に胎児のドパミン作動性細胞移植を受けて未だにドーパミン作動薬なしでなんとかやっている2人を長期間追跡調査した、2件の症例報告が示された。

 

「パーキンソン病患者の治療には、自由に使用できる様々な治療法があることが重要だ。」

ニューヨーク市マンハセットにあるファインスタイン医学研究所(Feinstein Institute for Medical Research, Manhasset, New York)の Andrew Feigin はこう話している。

 

PD遺伝子治療の以前の試みでは、ドーパミン作動性細胞の喪失を埋め合わせるために アデノ随伴ウイルス を使用して単一遺伝子を脳の色々な領域に導入した(⇒First Phase 2 Success for Gene Therapy in Parkinson’sCut to the Chase: Therapies Go Directly to Central Nervous SystemA phase I study of aromatic L-amino acid decarboxylase gene therapy for Parkinson's disease.)。

これらの小型ウィルスはそれぞれ2種類までの導入遺伝子を運び、ホストのDNAとは切り離して存在出来る。

レンチウィルスはそれ以上のカーゴを運び染色体DNAに組み入れることが出来る。

Palfi と同僚は、ドーパミン合成に必要な3種類の遺伝子チロシンヒドロキシラーゼ、シクロヒドラーゼ1(※⇒GTP cyclohydrolase I)、アミノ酸デカルボキシラーゼ(アミノ酸脱炭酸酵素)全てを単一のレンチウィルスベクターに組み込み、ProSavinを作り出した。

 

ProSavin をテストするため、研究者達はPDのサルのモデルの線条体にこれを注入した。

その部位の線条体ニューロンはドーパミンを合成し、この治療は運動障害を改善した(⇒Dopamine gene therapy for Parkinson's disease in a nonhuman primate without associated dyskinesia.)。

 

線条体ニューロンは通常はドーパミンを合成せず、PDの神経変性の主要部位である黒質から投射するニューロンより得ている。

Palfi と同僚は、ProSavinが人間でも同様安全に作用するかどうか調べようと試みた。

 

 

研究者達は48歳から65歳までの15人の患者を非盲検臨床試験に登録した。

各自は、背側線条体(新線条体)の一部である被殻の両側に低、中、高用量何れかのProSavinの単回投与を受けた。

研究者達は初めの1年間はまず毎月、それから3ヶ月毎に患者を評価した。

彼らは統一パーキンソン病評価尺度(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale:UPDRS)スコアで運動制御を検査し、生活の質(QOL)を評価し、血液サンプルを採取し、ジスキネジアを検査し、副作用を書き留めた。

6ヶ月目に11C-ラクロプリド(Raclopride:ドーパミンD2受容体に結合する放射性薬剤;⇒パーキンソン病と類似の病気でのポジトロン断層撮影(PET))と18F-レボドパ(18F-levodopa:ドーパミンの前駆物質ドーパの標識化合物)を用いてドーパミンの取り込みと放出のPET測定が行われた。

 

6ヶ月目と12ヶ月の追跡調査では、PDの標準的治療のレボドパを摂取しない場合に患者はUPDRSの運動スコアで平均30%の有益な減少を示した。

最も高い用量を投与されたグループが最も改善されていた。

気分や日常生活動作のような非運動要素を報告するUPDRSの総スコアも、オン時オフ時(※⇒Wearing-off現象とは?)のいずれも改善していた。

薬剤と関連する副作用の殆どは軽度で、これにはオン時のジスキネジア(※⇒パーキンソン病におけるジスキネジア)が含まれている。

これらは高用量のグループで頻繁に現れ、経口ドーパミン治療を減らすと消える傾向にあった。

免疫アッセイでは治療に対する明らかな免疫反応は示されず、MRIでは炎症は検出されなかった。

 

継続中の追跡調査試験(⇒Long Term Safety and Efficacy Study of ProSavin in Parkinson's Disease)では、研究者達はこれらの患者を3年間は半年毎に、7年かそれ以上の場合は年に1回評価する予定である。

彼らは今回のレポートでは、幾つかの利用可能な追跡調査データを提供している。

少数の患者が4年目に到り、大部分は未だにオフ時の運動スコアに改善を示している。

 

この結果は改善を示しているが、コントロール(対照)グループを欠いているので有効性に付いて結論を出すことは出来ない、と著者らは記している。

変化の度合いは別の手術を伴うPD臨床試験のコントロールグループで報告されているものと類似しているので、これはプラシーボ効果(偽薬効果)により説明出来る可能性が考えられる、と彼らは述べている。

しかし、用量反応は別なふうに示唆している。

この試験に関与していなかった研究者達は、このような初期の侵襲的試験が非盲検で行われなければならなかったことは容認したが、コントロールグループの欠如は彼らの最重要の留意点だった。

以前のPDの肯定的な非盲検試験では、その後に失望的なプラシーボ対照試験が続いたと Feigin は指摘している。

 

他のものには、有効性は最も重要な成果ではなかった。

「この安全性プロフィールは心強い。

そして、神経変性疾患の遺伝子治療の素晴らしい安全記録を基礎としている。」

サンディエゴにある RTBioconsultants, Inc. の Raymond Bartus はこのように Alzforum にコメントしている。

Feigin もこの考え方に同意している。

「こういった試験が更に行われて患者をリスクに晒すことなく出来ることが理解される程、更に人々は追求する価値のある新たな形態の遺伝子治療を見つけるだろう。」と彼は話している。

 

付随論説の中でカナダのバンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia, Vancouver, Canada)のJon Stoesslは、線条体細胞は制御出来る方法でドーパミンを貯め込み放出し取り込むようにはなっておらずこのことがジスキネジアの増加を説明し得る、と指摘している。

こういった欠点にも係わらず、この肯定的な安全性の結果はPDの運動と非運動の両方の症状をターゲットとする遺伝子治療に道を拓く、と彼は付け加えている。

彼のグループは、盲検試験を開始する前に人間以外の霊長類を用いて細胞がもっとドーパミンを合成できるように最適化したバージョンを検証する過程にある、と Palfi は話している。

 

 

 

細胞移植レシピエント - 数年後には彼らはどこに?

 

脳内のドーパミンを高めるための関連する試みでは、スウェーデンの ルンド で1990年代半ばに研究者達が18名のパーキンソン病患者に胎児のドーパミン作動性神経芽細胞を移植した。

 

JAMA Neurology 誌のレポートで、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)の Thomas FoltynieZinovia Kefalopoulou が率いる研究者達は術後15年と18年経過した2名の英国在住患者の臨床的状態を説明した。

 

このコホートの他の患者達は追跡調査で不明となってしまった、と3つの異なる国から訪れた人々をこれほど長い間把握しておく困難さを引き合いに出しながら Kefalopoulou は説明している。

以前のレビューがこのコホートにおける移植の結果変数を詳述している(⇒Cell therapy in Parkinson's disease.)。

その当時、何人かの患者には40%から60%のUPDRS運動スコアの改善が見られたが、他のものには殆ど恩恵がなかった。

今回報告された2名の患者は前者の範疇に入っている。

 

2名とも、現在のUPDRS運動スコアは当初のベースラインよりも改善している。

移植後は徐々に改善して行き、そして横ばい状態になった。

両者は経口レボドパの使用を徐々に減らし、そして何れも認知症を発症していない。

 

パーキンソン病は通常は着実に進行するのに彼らはそれどころか移植後僅かに改善しているように見え、移植がこの疾患の自然な経過を変えたかも知れないことを示唆している、と Kefalopoulou は Alzforum へのメールに書いている。

術後にはやはり移植片が誘発するジスキネジアがある程度起こったが、メリットはこの副作用を上回っている、と著者らは記している。

 

他の非移植者の剖検データでは一部の移植細胞に レビー小体 が現れており(⇒Dopaminergic Transplants—Stable But Prone to Parkinson’s?)、同様の病理はこの2名の患者の移植でも起こっている可能性がある。

それでも尚、これは機能しているように思われる、と著者らは記している。

「ドーパミン作動性細胞の移植は相当量のしかも長続きする補正効果をPDにもたらし得る。」と彼らは付け加えている。

胎児組織は入手困難だが、しかし最近の幹細胞技術の進展はドーパミン作動性細胞をPDに用いる関心を再び呼び起こしている(⇒Therapeutic-Grade Dopaminergic Neurons From Stem Cells?Faster, Safer Ways to Cook Up Dopaminergic Neurons)。

 

 

デンバーにあるコロラド大学(University of Colorado, Denver)の Curt Freed は、この結果がコホートの当初の患者18名の平均的な転帰を表しているのではないという著者らの警告を繰り返して述べている。

彼は、殆どの患者において移植がレボドパの必要性を軽減しているということに懐疑的であり、彼らは代表例ではないので結果を解釈する際に過度に楽観的であることに対して警告している。

しかし Freed は、移植は通常は実際にレボドパ用量の半分を代替し、埋め込み装置が原因の持続する感染リスクを伴う 脳深部刺激療法 の安価な外科的選択肢かも知れないとも話している。

この3つの何れも運動を改善することが出来るが、何れもPDの根本的な神経変性過程を止めることはない、と彼は述べている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルツハイマー病の遺伝子治療は、現在 CERE-110 というアデノウィルスを使用してNGF(神経成長因子)を軽度から中等度アルツハイマー病患者に導入する試験がフェーズ2で、試験完了予定は2014年12月です。

 

  ⇒ Randomized, Controlled Study Evaluating CERE-110 in Subjects With Mild to Moderate Alzheimer's Disease

 

 

 

Wiki の遺伝子治療には、「代表的なものでは、治療用の遺伝子情報を組み込んだレトロウィルスを異常な遺伝子を持つ細胞内に浸入させる手法がとられているが、成功例は少なく、より画期的なDNA導入法が期待される。」とあり、今回のPDの場合はどうなのかなと思っていましたけれど、やっぱりもどの患者にも等しく効果が得られているわけではないようです。

 

フェーズ1の結果は、「A phase1 study of stereotactic gene delivery of AAV2-NGF for Alzheimer's disease」で Abstract が読めます。

けれどもフェーズ1なので安全性と良好な忍容性は当然としても、認知が改善されたではなく認知低下が促進された証拠は見られないという書き方にはちょっと不安を感じます。

 

 

 

要約

背景

神経成長因子(NGF)はアルツハイマー病(AD)の機能を回復させコリン作動性ニューロンの変性を保護する可能性を秘めた内因性の神経栄養因子タンパク質であるが、安全で効果的な運搬の証明は成功していない。

方法

定位手術と遺伝子導入の組み合わせは、長期間に渡る運搬の障害を解決する可能性のある手段を提供する。

非盲検臨床試験では、NGFを運搬する遺伝子改変アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2)遺伝子治療ベクター(AAV2-NGF [CERE-110])の3つの漸増用量の安全性と忍容性及び初期の有効性を評価した。

10名のAD被験者が マイネルト基底核に両側定位的AAV2-NGF投与を受けた。

結果

2年間ではAAV2-NGFは安全で忍容性が良好だった。

PETイメージングと神経心理学的試験では、加速的低下の証拠は示されなかった。

剖検脳組織では、標的とした遺伝子が媒介する長期間のNGF発現と生物学的活性が裏付けられた。

結論

この試験は、マイネルト基底核へのAAV2-NGFの両側定位的投与が実現可能で忍容性が良く、長期間の生物学的に活性なNGF発現を生み出すことが出来るという重要な証拠を提供し、現在進行中の多施設二重盲検偽手術対照試験の開始を支持している。
























関連記事
スポンサーサイト




コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://dislocon.blog.fc2.com/tb.php/557-ab0f4cbe